ポータブル赤道儀は、アイベル社製のCD-1を持っているのですが、GP2ガイドパックのカスタマイズにも記した通り、赤道儀の赤緯体にしてしまったため、ポータブル赤道儀が無くなってしまいました。
手動の木製タンジェントスクリュー式赤道儀もありますが、撮影中は手が放せなかったり、追尾時間が限られるという欠点もあり不便です。
そこで、もう一台赤道儀が欲しいな…。と思っていたのですが、それなりのお値段が…。
それならば自分で作ってみようという事になりました。
さて、赤道儀は、極軸を24時間で一周というゆっくりとしたスピードで回転させなければならないのですが、そのためにはモーターの回転をギアを使い減速させる必要があります。ところが、ギアの数を増やして減速率を上げると、工作が難しくなる上に誤差も大きくなるので精度が下がってしまいます。
そこでモーターにウォームギアを付け、ウォームホイールを回転させ(1/40に減速)、その軸にウォームギアを付け極軸のウォームホイールを回転させる(1/120に減速)という駆動方法にしました。これによってギアの総数は4つだけでモーターの減速率を1/4800とする事ができます。
材料は次の通りです。
アルミ(A5052)切板 200mm×130mm×10mm 滑川軽銅 ¥1,244
アルミ(A5052)切板 200mm×130mm×5mm 滑川軽銅 ¥865
アルミ(A5052)切板 40mm×40mm×35mm 滑川軽銅 ¥640
CGウォームホイール CG1-120R1 小原歯車工業 ¥2,311
BGウォームホイール BG0.8-40R1 小原歯車工業 ¥1,853
SWウォーム SW1-R1 小原歯車工業 ¥585
SWウォーム SW0.8-R1 小原歯車工業 ¥575
リニアシャフト MYSAA10×100 MonotaRO ¥203
リニアシャフト MYSAA6×100 YSK ¥240
軸受けユニット×2 UFL100 日本ピローブロック ¥1,276×2
樹脂製無給油軸受け×2 80F0605 オイレス工業 ¥34×2
アルミ丸パイプ パイプ径6mm 厚さ0.5mm 長さ1000mm 光モール ¥186
以上は通販サイト「MonotaRO」で調達しました。
ステッピングモーター ST-42BYG020 秋月電子通商 ¥1,000
この他に
1/4W20ボルト50mm×7・20mm×1・15mm×1・6角穴ボルト×2、
M3なべネジ20mm×3・15mm×2・8mm×6・皿ネジ10mm×1
アルミ平棒 1000mm×40mm×3mm、300mm×30mm×5mm、1000mm×10mm×2mm
クリスタルハンドル55ミリ シルバー×2 株式会社ベストHI
(値段は2013年6月時点です。)
使った工具は
ボール盤
鉄工用ドリル 2.5mm、3mm、5.1mm、7mm、8mm、10.1mm ナチ(NACHI)
タップハンドル 新潟精機
ハンドタップ 1/4W20 イシバシ精工
ハンドタップ M3 早坂精密工業
金属用のこぎり
ケガキ棒 MonotaRO
直尺 MonotaRO
直尺用ストッパー シンワ測定
金工用ヤスリ
などです。
コントローラーも必要ですが、以前に作った物をそのまま流用してプログラムを付け加える事で対応します。
まず、パソコンで製図してプリントアウトします。0.5mm単位で寸法を書き込んであります。
製図通りにケガイて穴あけをした状態のアルミ板
ケガキの際には直尺用ストッパーを使うと楽に作業ができます。
5.1ミリのドリルであけた穴にはカメラ三脚と同じインチ規格の1/4W20のネジを切ります。
極軸に使うCGウォームホイール CG1-120R1 小原歯車工業です。直径122mm。一周に120枚歯が刻まれています。このホイールを軸に固定するために…
ボール盤で5.1ミリの下穴をあけてタップでネジをきります。
軸受けユニットUFL100を10ミリ厚のアルミ板にボルトで固定して、そこにリニアシャフトを固定します。
そしてウォームホイールを差し込み6角穴ボルトでシャフトに固定します。
これで底面の加工は終了です。
ウォームホイールを回転させるウォームギアを支持するためにこんな部品も作りました。5mm厚のアルミ板に8ミリの穴をあけてそこに樹脂製軸受けを押し込みます。そして反対側には幅10mmのアルミ棒をネジ止めしてシャフトが抜けないようにします。さらに、この部品を上面のアルミ板に固定するネジ穴も。2.5ミリの下穴をあけた後、M3のネジを切りました。細かい作業です。
こういう感じになります。
ウォームギア(右の螺旋状の歯車)が1回転すると、ウォームホイールが1歯回転します。
つまりウォームギアが120回転するとウォームホイールが1回転します。
続いて上面のアルミ板の穴あけです。こちらはモーター固定用3mm、極軸の貫通穴10.1mm、など、少々複雑ですが、慎重に穴明けをします。
ウォームギア支持金具を固定するネジが1つだけモーターと干渉してしまうので、そのネジだけ皿ネジを使います。その穴だけ形状を変えてあります。(矢印)
使用するモーターは電子部品の販売でおなじみの秋月通商で購入したST-42BYG020です。通常200ステップで1回転するステッピングモータです。これを倍の400ステップで回転させる1-2相励磁駆動で回転させます。
モーターの軸は直径5mm、長さ16mmしかないので、アルミ丸パイプでサイズアップします。これでウォームギアのサイズに合います。
モーターは上面のアルミ板に下向きに取り付けます。
右には軸受けユニットUFL100が取り付けてあります。底面のアルミ板に付けたものと同じ物ですが、取り付ける向きを90°回してあります。
モーターのケーブルが露出するので、アルミのパイプを長さ10mmに切ってヤスリをかけて面取りをしてケーブルに通しました。モビルスーツ「ザク」のイメージ。(笑い)
これはウォームギアに回転を回転させるウォームホイールです。40枚の歯が刻まれています。これにも軸に固定するネジ穴を切ります。
右のウォームギアがモーターの軸についているもの上部のウォームギアは極軸を回すもの。そしてネジ穴加工したウォームホイール。M3長さ8mmのネジ2本で固定してあります。
モーターが40回転するとこのウォームホイールが1回転します。
つまりモーターが4800回転すると極軸が1回転します。
こちらは40mm×40mm×30mmのアルミ素材。これを穴開け加工して雲台ベースにします。
完成した雲台ベースとスリック製の自由雲台。側面の2つのボルトは極軸に固定するための物。雲台を固定するボルトは貫通しています。ただ、35ミリの長さのネジを切る事はハンドタップの歯の長さを超えてしまうので出来ません。まずネジ山より大きい直径7mmの穴を半分ほどまであけて、そこからネジの下穴5.1mmをあけてネジを切りました。
赤道儀のコントローラーとはLANケーブルで接続します。
仮組みした赤道儀全体です。三脚取り付け時に支えやすいように把っ手を付けました。ボディーと同じアルミ材質の物を選びました。
この段階でウォームホイールやベアリングの位置を微調整します。
上下のアルミ板は面取りをしてあります。尖っている場所があると、撮影中の怪我に繋がるので、大事な作業です。
裏面です。あいている穴は全て1/4W20のネジが切ってあります。取り付けが色々なバリエーションで出来るように余分にあけてあります。
幅40mm、厚さ3mmのアルミ板を上下のアルミ板で挿んで、ボルトを締めて固定。
側面のアルミ板は上下のアルミ板を平行に保ち、内部のギアを保護する役割があります。
接続端子の部分はくり抜いてあります。ドリルで数カ所大まかに穴をあけてヤスリで仕上げました。
ボディーのサイズは
200mm×130mm×55mm、重さは2.8kgです。
ちょっと大きめ、重めですが、個人の工作で中途半端な物を作るとカメラを支える事ができない貧弱な物になってしまうので、このくらいは仕方ないですね。
ただ、もっと重い「ポータブル赤道儀」も売られているので、許容範囲でしょう。
ピリオディック・モーションを測定するために24分(ウォームギア2回転分)わざと極軸をずらして天の赤道付近を撮影しました。
ピリオディック・モーションとはモーターの回転速度、歯車の噛み合わせ、軸の偏芯などの影響で赤道儀に周期的な回転誤差が生じることです。
拡大してみると、比較的滑らかなカーブを描いています。これは極軸を回転させるウォームギアの偏芯のみの影響しか受けていない事を表していて、±35秒角ほどでした。
(隣の「150秒角」は天の赤道付近を10秒間固定撮影した星の軌跡です。)
この画像はBORG45EDII 0.85xDG(合成276mm)の直焦点で撮影しましたが、実際には広角~標準レンズで2分ほどの露出での撮影に使います。メーカーが作って販売しているポータブル赤道儀には及びませんが、問題の無い精度に仕上がったと思います。
ちなみに、NikonD5100(D7000)に焦点距離28mmのレンズを付けた場合、70秒角はおよそ2ピクセルにあたります。
コントローラはオートガイドにも対応していますので、その気になればもっと精度の高い撮影もできると思います。
上の画像を撮影した時の機材です。短い露出ならこのくらいの焦点距離のレンズでも大丈夫かもしれません。
アルミ素材と300ミリのリニアシャフト、そして余ったアルミプレートでドイツ式赤道ユニットを造りました。どの向きにカメラを向けても安定して動きます。
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